丁張りのかけ方2026年版|法丁張の計算と現場の8ステップ

- 丁張りは「図面の1点を現場に移す作業」です。図面から抜く数字は、道路センターからの距離と標高の2つだけ。
- 施工図の3つの「?」を高さから順に解けば、丁張りの位置と標高が出ます。現場の作業は8つで、計算が要るのは「標高差の分だけ下げる」所だけです。
- ICT(情報通信技術)を使った施工が広がった2026年でも、丁張りは減っただけで、なくなってはいません。
はじめに
こんにちは、ジョウ所長です!
「丁張りは先輩に教わったけど、根拠はあいまい」「参考書がほとんどなくて、会社ごとに自己流」「ICTが入って、丁張りを習う機会が減った」。そんな声をよく聞きます。
2021年に出した丁張りの動画を、2026年版として作り直しました。5年たっても手順そのものは変わっていません。加えたのは、丁張りが減った場面と今でも要る場面の整理です。
ここでいう丁張りは、法面(のりめん=斜めの面)の位置と傾きを示す「法丁張(のりちょうはり)」のことです。例題は、私が昔担当した道路工事のブロック積み(勾配1:0.5)の図面で、測点No.289に丁張りをかける想定です。2021年版と同じ図面を使っています。

【解説図】丁張りの根拠があいまい、参考書がない、習う機会が減った。そんな悩みに、図面の2つの数字・施工図の3つの「?」・現場の8つのステップ・2026年のICTと丁張りの4つで答えます
丁張りは「図面の1点を現場に移す」作業
位置と高さの基準がないと、どこを掘るかが決まりません。法丁張が木の板で現場に示すのは、次の3つです。
- 位置:どこを掘るか
- 高さ:どこまで掘るか
- 勾配:どの傾きで掘るか(今回は1:0.5)
位置の基準は、現場の座標と中心線です。道路工事なら道路センター、河川工事なら河川センター。中心線は発注者さんの 線形計算書 に書いてあります。手元になければ、必ずコピーをもらってください。
カーブがある現場では、曲線の始まりと終わり、曲線の長さ、円の中心なども拾っておきます。縦断図の「曲率」の欄にも書いてあることが多いです。
なお、この話は現場に基準点があることが前提です。なければ、先に基準点測量で現場の基準点を設置してください。
図面から抜く数字は「センターからの距離」と「標高」の2つ
この2つが決まれば、丁張りの位置は計算できます。数字は4枚の図面を行き来して固めます。
- 平面図:どの測点にかけるかを決めます。今回はNo.289です。
- 横断図:道路センターからの距離を拾います。センターから17.462mの所が構造物(ブロック積み)の起点です(施工図では1:0.5の斜めの線の下の端に当たります)。
- 展開図:No.289の天端(てんば=構造物の一番上)の標高を拾います。139.855mです。
- 構造図:勾配と天端の形を拾います。勾配は1:0.5、天端コンクリートの幅は750mmです。

【実際の画面】横断図。道路センターから17.462mの所が構造物の起点です

【実際の画面】展開図。No.289の天端の標高は139.855mです

【実際の画面】構造図。勾配1:0.5と、天端コンクリートの幅750mm
構造図には「L=H×1.118」とも書いてあります。法長(のりちょう=斜めの長さ。現場では「のりなが」とも言います)は、高さに1.118を掛ければ出る、という意味です。1:0.5の勾配なら、三平方の定理で√(1²+0.5²)≒1.118になります。
施工図で3つの「?」を高さから順に解く
施工図には、丁張りの位置を出すための「?」が3つあります。法面の水平距離は「高さ×勾配」で出るので、高さから順に解いていきます。
3つ目の?:法面の高さ
天端139.855mから、施工図で法面(1:0.5の斜めの線)の下の端に書いてある135.065mを引いて、139.855−135.065=4.790mです。
1つ目の?:法面の水平距離
4.790×0.5=2.395mです。1:0.5は「高さ1m上がると、水平に0.5m動く」という意味なので、高さに0.5を掛けます。

【解説図】勾配1:0.5は「高さ1m上がると、水平に0.5m動く」こと。法長は√(1²+0.5²)≒1.118で、例題の高さ4.790mなら水平は2.395mです(左右の三角形の大きさは合わせていません)

【実際の画面】施工図の1つ目の「?」。高さ4.790mに0.5を掛けて、水平距離2.395mを出します
2つ目の?:天端から丁張りまでの水平距離
天端コンクリートの幅が0.750mです。今回は丁張りを天端より0.300m上に取ります。0.300m上がった分、1:0.5で0.150m後ろへ下がるので、0.750+0.150=0.900mです。

【実際の画面】施工図の2つ目の「?」。天端の幅0.750mに0.150mを足して0.900m
3つの答えがそろったら、道路センターから丁張りまでを足し算します。
- 距離:17.462+2.395+0.900=20.757m
- 標高:139.855+0.300=140.155m
道路センターから20.757mの所の、標高140.155mの位置から掘り始める、ということです。

【解説図】断面で見ると、道路センターから17.462+2.395+0.900=20.757m、標高140.155mが丁張りのポイントです(分かりやすくするため、長さの比率は実際と変えています)

【実際の画面】道路センターから丁張りのポイントまで。17.462+2.395+0.900=20.757m
座標は、縦断方向(道路の進む向き)に対して直角に振ってください。斜めにかけると位置が合いません。
現場で法丁張をかける8つのステップ
現場の作業は8つ。計算が要るのは標高差に勾配を掛ける⑥(⑦も同じ要領)だけです。
- 丁張りの設置ポイントを測量します。計算した道路センターから20.757mの位置を出します。
- 測量杭を2本打ち込みます。ポイントから30cm程度、横にずらします。場所が狭ければ1本でもかまいません。
- 打ち込んだ杭の頭の標高を測ります。今回は140.910mでした。レベルでもトータルステーション(角度と距離を測る機械)でもかまいません。
- 横板(貫板=ぬきいた)を付けます。手が届いて作業しやすい高さにします。今回は杭の頭からスケールで測って、20cm下の140.710mと50cm下の140.410mにしました。キリのよい値なら何cmでもOKです。
- ポイントを横板の高さまで上げます。水平器か下げ振りで、①のポイントを真上に移すだけです。
- 下の横板の印を、勾配の分だけ後ろへ下げます。
- 上の横板も同じ要領で下げます。
- 2つの印に丁張り板を当て、釘で止めて完了です。

【実際の画面】手順④。杭の頭140.910mから20cm下(140.710m)と50cm下(140.410m)に横板を付けます。図の「現況高140.155」は、図面から計算した丁張りのポイントの標高です
いちばん間違えやすいのが⑥です。下の横板140.410mと、ポイントの標高140.155mの差は、140.410−140.155=0.255m。この0.255m高い所では、法面は1:0.5の分だけ後ろにあります。0.255×0.5=0.1275、つまり約128mm後ろへ下げた所に印を付けます。

【実際の画面】手順⑥。標高差0.255mに0.5を掛けて、約128mm後ろへ下げます。図の255・128はmm(ミリ)で書いています
この図面では「後ろ」は右側ですが、現場によっては左側です。標高が上がると後ろへ、下がると前へ。ここがポイントです。
⑦も同じです。上の横板140.710mと下の横板140.410mの差は0.300m。0.300×0.5=0.150m。上の横板では、⑥の印の真上から、さらに0.150m後ろへ下げた所に印を付けます(元のポイントの真上からは0.1275+0.150=約278mm)。

【解説図】横から見た丁張り。下の横板は約128mm、上の横板はさらに150mm後ろに印を付け、2つの印に丁張り板の同じ側の縁(へり)を合わせると1:0.5になります
⑧で2つの印に板を当てれば、板の勾配は1:0.5になっているはずです。勾配定規で確かめると「おお、なってるやん」となります。勾配定規だけでかけると根拠が分かりにくいので、理屈を覚えるまではこの手順がいちばんだと私は考えています。

【実際の画面】手順⑧。2つの印に丁張り板を当てると、勾配1:0.5になります。図の「現況高140.155」は、図面から計算した丁張りのポイントの標高です
※画面は元の動画から切り出しています(字幕と説明の帯は切り落としています)。
若手がつまずくのは、いつも標高まわり
位置(XとY)は機械が出してくれますが、高さは自分で計算しないといけないからです。
- つまずき①:標高で位置が前後するのを忘れる。高い位置ほど、法面は後ろへ下がります。「標高が変わると掘る位置が変わる」という感覚を身につけてください。
- つまずき②:現場の地盤が図面と違う。基準は図面上の標高と位置のままです。現場の地盤が思ったより低ければ少し前へ、高ければ少し後ろへ。事務所の計算どおりにはいかない前提で、この感覚を持っておきましょう(向きは今回の例題の場合です)。
- つまずき③:杭の位置と保全を軽く見る。丁張りの見通しや重機の動く道筋を見てから杭を打ちます。重機が通る所にかけると、飛ばされてしまいます。また、自分が打った杭も、元からある杭も、基本は壊さない・動かさないことです。
2026年、ICTで丁張りはどうなったか
結論は、丁張りは減ったけれど、なくなってはいない、です(2026年9月時点の私の現場感覚です)。ICT建機(3次元の設計データを入れて、運転席の画面で高さや勾配を見ながら施工できる建設機械)が読むのは3次元設計データで、丁張りではないからです。

【イメージ図】ICT建機の運転席の画面に高さと勾配が出るので、法面に丁張りを並べる必要が薄くなりました
減った場面:3次元設計データをICT建機に入れる工事です。上の図のとおり、法面に丁張りを並べる必要はほぼなくなりました。起工測量から出来形(できあがりの形)まで点群で面として管理するので、測点ごとの「点」の丁張りに頼らなくなっています。
今も要る場面は3つあります。
- 構造物まわりや小規模な土工、ICT建機が入らない現場。「このエリアは丁張りでいいんじゃない?」という所は、現場の中にまだあります。
- 型枠やブロック積みなど、人が据える作業。職人さんが目で見て「こんな感じか」と分かる基準は、今も丁張りです。
- ICTの数字が合っているかの確認。設計データだけだと目印がなく、発注者さんや社内の人が来たときに確かめにくいんです。私は、標準断面の1か所だけでも丁張りを1本かけることをおすすめしています。その丁張りとバックホウのバケットの位置が合えば、自分も周りも安心です。
道具で楽になったこともあります。杭ナビや自動追尾のトータルステーションで、昔は最低2人だったポイント出しが1人でできるようになりました。iPhoneのLiDAR(光で距離を測るセンサー)で点群を撮れば、現場のおおよその状況もすぐ分かります。計算も、電卓から3次元CAD(パソコンで図面を描くソフト)や設計データへ変わってきました。
それでも、点群でも設計データでも丁張りでも、最後に根拠を負うのは計算した人間です。楽にはなりましたが、理屈は今も必要です。この理屈の上に点群や3次元の設計データがある、と思ってもらえたらうれしいです。
元の動画はこちら
この記事は、YouTubeの動画「丁張りのかけ方2026.リニューアル版」(2026年9月3日公開)をもとにまとめました。図に赤枠や矢印を足しながら順番に説明しているので、計算の流れは動画のほうが分かりやすいと思います。
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