目次
はじめに
今回は公共土木工事を始める際に必ず実施する 基準点測量 について、従来型の トータルステーション と レベル を用いた手法にフォーカスして解説します。
この記事を読むメリット
- 発注者との協議ポイントがわかり、施工前の不安を解消できる
- 自社で測量を行う場合に必要な手順とチェックリストが手に入る
- 監督として測量会社へ外注する際の“見るべき指標”が整理できる
基準点測量とは?
基準点測量は、座標(XY) と 標高(Z) の“基準”を現場に設定し、設計図書どおりに構造物を施工できる状態をつくるための測量です。大きく以下の 2 つに分かれます。
種類 | 目的 | 主な測器 |
---|---|---|
基準点測量 | 平面位置(座標)を確定する | トータルステーション |
水準測量 | 高さ(標高)を確定する | オートレベル |
この 2 つを組み合わせ、さらに 路線測量(中心線や現況地形の把握)へと発展させることで、施工に必要な 位置 と 高さ を一貫して管理します。
各測量の流れとポイント
ここでは 4 つのステップ で進めるアナログ測量の王道パターンを紹介します。
1. 現地踏査(選点)
- 発注者から提供される 詳細設計成果(点の記を含む)を確認。
- 点間距離・視通・障害物・施工後の変化を考慮して使用点を選定。
- 公共基準点 が構造物と重なる場合は必ず 事前協議 し、滅失届や保護措置を検討。
2. 基準点測量(座標)
- 例:4 点を一周する「閉合トラバース法」。
- 観測結果から 距離・角度の閉合誤差 を算出し、国土地理院の許容範囲内かチェック。
- 工事用の新点を追加する場合も同様に ぐるり一周 回して精度確認。
3. 水準測量(標高)
- 既設 BM(ベンチマーク)と新設 BM を 往復観測 し、往路–復路差を評価。
- 高低差 3 m 程度の BM を複数設置すると、スタッフ読取と後工程がスムーズ。
4. 路線測量(現況地形)
- 設計中心線を現地に落とし込み、横断測量 で現況地形を取得。
- 切土・盛土量の算出に直結するため、凹凸ポイントは細かく観測。
ワンポイント:GNSS が主流になりつつありますが、公共工事ではまだトータルステーション+レベルの手法を求められる場面が多いです。アナログ手法を押さえておくと“いざという時”に役立ちます。
基準点測量 実践の深掘り
1. 公共基準点の取り扱い
- 公共基準点(1〜3 級基準点など)は 国土地理院 に登録済み。
- 施工で滅失・移設が必要な場合は、発注者・管理者と 書面で協議。
2. 工事用新点を設定するときのコツ
項目 | 推奨値 / 考え方 |
座標+標高を両持ち | 片持ち点は後工程で使いづらい |
標高差 | 3 m 前後以内(スタッフ読取が楽) |
点間距離 | 30 m 前後(視認性と精度のバランス) |
配置 | 完成検査やクレーン配置を見据えて計画 |
3. 継続工事・災害後の測量で注意すること
- 前工事の 構造物・基準点 は必ず併観測し、整合性を確認。
- 災害前後で地盤が変動している可能性がある場合は、発注者と 補正方針を協議。
まとめ
- 基準点測量の本質 は「設計位置に確実に構造物を据えるための“基準”をつくること」。
- 不明点や疑義があれば 必ず発注者に確認 し、根拠を残す。
- 精度管理を徹底すれば、後工程の出来形・出来高にも自信を持って臨めます。
最後までお読みいただきありがとうございます。この記事が現場監督の皆さんの一助になれば嬉しいです!