はじめに
「iPhoneで測量なんて、精度的に無理でしょ?」
建設・土木の現場にいると、そんな声を聞くことも少なくありません。確かに、高価なレーザースキャナに比べると、スマホのLiDARセンサーは簡易的なもの。でも、本当に「使えない」のでしょうか?
こんにちは、ジョウ所長です! 以前、iPhone LiDARを紹介する動画を公開したところ、多くの反響をいただきました。あれから1年、今回はさらに一歩踏み込んで、「iPhone LiDARでスキャンした点群データと、現場の座標をどうやって紐付けるのか?」という、より実用的なテーマに挑戦してみました。正直、私自身の個人的な興味と探求心もかなり詰まった検証になっています!
背景:国交省も認める「スマホ測量」の流れ
実は、国土交通省も「小規模な工事においては、スマートフォン等に搭載されたLiDAR機能などの簡易な機材を活用することも可能」といった内容のガイドラインを出しています。(※正確な表現は最新のガイドラインをご確認ください)
技術は日々進歩しており、一昔前の「常識」はどんどん変わっていきます。もはや「知らない=損する」時代。高価な専用機材だけでなく、身近なスマホで何ができるのかを知っておくことは、これからの現場で非常に重要になってきます。
安価で誰でも持っているiPhoneのLiDAR機能も、使い方次第で立派な測量ツールになり得る可能性を秘めているんです。
【実践】iPhone LiDAR × 現場座標! 5つのステップ
では、具体的にどうやってiPhone LiDARでスキャンしたデータに現場の座標を与えるのか? 今回は、以下の5つのステップで検証を進めました。
- ステップ1:測量アプリを選ぶ まずはiPhoneで3Dスキャンするためのアプリが必要です。今回は、無料で使える高機能アプリ「Scaniverse(スキャニバース)」を使用しました。他にも様々なアプリがありますので、試してみるのも面白いでしょう。
- ステップ2:基準点を設置・測量する 現場の座標と紐付けるためには、「基準」となる点が必要です。今回は、対空標識を複数設置し、トータルステーション(TS)を使って正確な座標値を測量しました。これが後工程での精度検証のキモになります。
- ステップ3:iPhoneでスキャン! いよいよiPhoneの出番です。「Scaniverse」を起動し、対象範囲を丁寧にスキャンしていきます。コツは、一筆書きのように、ゆっくりと同じペースで歩きながら撮影すること。ムラなくデータを取得することが重要です。
- ステップ4:点群データを書き出す スキャンが終わったら、データをパソコンで扱える形式で出力します。今回は、点群データの標準的な形式である「LAS形式」でエクスポートし、パソコンに転送しました。
- ステップ5:点群処理と座標付与 ここが今回の検証の核心部分。パソコンに取り込んだ点群データを、福井コンピュータの「Trend-Point」のような点群処理ソフトを使って処理します。ステップ2で測量した基準点の座標を利用し、「3Dヘルマート変換」という手法で、iPhoneで取得した点群データ全体に現場の座標系を与えます。
気になる精度は? 誤差検証の結果
さて、一番気になるのは「精度」ですよね。今回の検証では、TSで測量した座標値と、iPhone LiDARデータから算出した座標値を比較しました。その結果、誤差は最大でも約28mm、最小ではなんと2mmという結果に!
もちろん、測量条件やスキャンの仕方によって誤差は変動しますが、これは「簡易的な測量」としては十分に実用的なレベルではないでしょうか?
現場での具体的な使い方
点群データに座標が紐づくことで、活用の幅は大きく広がります。
- 簡易的な数量算出: 面積、距離、土量などの概算ボリュームを素早く把握。
- 現況記録・進捗管理: 現場の状況を手軽に3Dデータで記録し、変化を可視化。
- 打ち合わせ・提案資料: 3Dデータを使えば、関係者とのイメージ共有がスムーズに。
今回使用した「Trend-Point」は高機能な有料ソフトですが、座標付与(アライメント)だけであれば、無料で使える高機能ソフト「CloudCompare」などでも処理が可能です。まずは手軽に試せるのがスマホ測量の良いところですね。
まとめ:完璧じゃなくても価値がある!ICT活用の第一歩に
今回の検証を通して確信したのは、「精度が完璧でなくても、“使えるレベル”で現場が回るなら、それは十分に価値がある」ということです。
もちろん、高精度が求められる測量には専用の機材が必要ですが、日常的な記録や簡易的な計測、進捗管理など、iPhone LiDARが活躍できる場面はたくさんあります。
難しく考えず、「おもしろそう」「ちょっとやってみたいかも」と感じたら、ぜひ一度、お持ちのiPhone(LiDAR搭載機種)でScaniverseのようなアプリを触ってみてください。それが、建設業界におけるICT活用の大きな一歩になるかもしれません。
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ではでは。。。^^