はじめに
今回は
土木工事における一般的な座標計算の考え方
及びそれに伴う施工図等の作成の考え方
を解説していきます。
対象の方は
若手や中堅の土木技術者の方たち
とさせてもらっています♪
1.座標とは?
まずそもそも
「座標とは」の説明です^^
平面図(二次元)上において
縦軸を「X」横軸を「Y」
とした「点」を表したものになります
- 「X」軸上の真北へ向くほうを「正」
- 方向角が「0度0分0秒」
- 「Y」軸上の真東へ向くほうを「正」
- 方向角が「90度0分0秒」
座標の原点は
国土地理院により
下記↓の住所(東京都)に決められています
https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/datum-main.html
この時
日本の各地方から東京にある原点を基本として
いちいち計算していたのでは
座標値が大きくなりすぎますので
各都道府県ごとに原点を定めています
その表がこちらです↓
引用 国土地理院 わかりやすい平面直角座標系より
https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jpc.html
ちなみに参考として
「兵庫県」の原点は
「経度134度20分00秒,緯度36度00分00秒」となり
↓地図上で示すとこのようなところになります
ざっくり言うと
鳥取県の沖合に
兵庫県の原点「0.000 , 0.000」はあります
また現在の公共事業においては
「世界測地系(平成14年4月1日より施行)」へ
移行されていますので
平成14年以前の
古い座標データーを用いた測量等では
発注者及び測量会社に
十分な確認を行ってくださいね
2.座標計算の考え方について
つぎに「座標計算の考え方」について
解説していきますね
学生時代にならっている
「三角関数」と「座標」は考え方がほぼ同じです
唯一の違いは
・三角関数:X軸が横軸、Y軸が縦軸
・座標:X軸が縦軸(北南)、Y軸が横軸(東南)
となっている以外は同じ考え方です
よって座標計算を行う場合は
よく
「デキスパート_現場大将」「即利用くん」
などのソフトや
電卓を使用しますが
関数電卓にて直角三角形をつくり
三角関数を用いると
任意を座標を求めることができます
3.座標計算の前に_準備
つぎに「座標計算の前の準備」にいきますね
座標計算の基本の前に
現在ではAutoCAD(以下CADと呼ぶ)が
みなさんのパソコンにインストール
されている場合が多いと思います
このCADを使用すると条件によりますが
任意で新点座標を求めることができますし
かつ 任意の距離と方向角を求めることもできます
しかし、座標の基本が未収得の人が
この作業になれてしまうと
「計算ミス」や「設計変更」
また「CADデーター自体の間違い」等に
出会った時に
ミスをミスと気付かずに計算
施工し施工完了後ミスに気付き
その結果
施工のやり直し等の
不毛な時間及び原価の損出となります
よってCADを用いた座標計算は
基本をマスターした人のみが
行うようにしてください
CADのみの座標計算は基本NG
と考えてください。
ちなみにCAD登場前は
CADが無くても
座標計算をしていましたよ(;^ω^)
4.座標計算の前に_図面のチェック
まず「図面チェック」
から初めます
基本は平面図、縦断図、横断図の3つの図面です
4-1.平面図
まず「平面図」から
- 基準点となるトラバース点が記載されているか。
- 敷地等の境界線が記載されているか。(国交省の道路工事の場合は用地買収した官民境界線。河川工事の場合は河川と民家等の官民境界線など)
- 道路CL及び河川CLは記載されているか。
- 各測点は記載されているか。
- 築造する構造物(擁壁や護岸工など)が記載されているか。
4-2.縦断図
つぎに「縦断図」です
- 縦断勾配は記載されているか。
- 縦断勾配の変化点は記載されているか。
- 縦断勾配の変化点には「バーチカル」がかかっているか。
- 「単距離」「追加距離」のツジツマ及び追加距離の計算はあっているか。
- 「R」の区間であれば「Rの諸元」は記載されているか。(CLやTLなど)
- 「R」の区間の「BC」「EC」は記載されているか。
- 「R,クロソイド区間」であれば「KA」「KE」の記述はあるか。
- パラメーター「A」の記載はあるか。
4-3.横断図
つぎに「横断図」です
- 平面図記載の測点は記載されているか。
- 横断勾配は記載されているか。
- CLの計画高(FH)は記載されているか。
- 各測点ごとの築造予定の構造物とCLとの離れ(CLとの距離)は記載されているか。
以上の図面チェックは
座標計算の前に必ず行ってください
5.座標計算の前に_発注者とのコミュニケーション
今から座標計算を行う現場が
公共事業の場合は
道路工事や河川工事等いろいろあると
思いますが
必ず発注者から
工事発注前実施している
「詳細設計業務」の資料を
貸与してもらって下さい
この「詳細設計業務」の中に
現場使用する下記の2つの情報が入っています
- 基準点データー(水準点及びトラバース点及び河川距離標など)。
- 道路CL座標及び河川CL及びそれに付随する座標データ
以上の
座標データ(座標値)は現場施工には必ず必要です
もし
「発注者が座標データが無い。」
「座標データは無いが
この過年度の資料で施工してほしい。」等の
不明確な返答がきた場合は
一度、本社(上司や先輩等)へ確認してください
この基準点は
非常に重要で
ここのデータが「不備」であった場合
いくら詳細な座標計算を行っても
最終的に正しい座標値となりません
例えばですが
他業者の現場と自分の現場を
結びつける座標データーは
ここの基準点が基本です
ここを間違うと施工完了後
次の施工業者が来て測量すると
まった違う結果となるので要注意!!!です。
また
民間工事の場合も
発注者及び設計者に
基準点及び道路CL等の座標値が欲しい
と依頼して下さい
自社でお願いします。
と返答があった場合には
こちらで測量した結果
及び道路CL等を記載した「施工図」を作成し
発注者、設計者と協議を行い
必ず承認をもらったのちに施工して下さい
6.実際の座標計算_例題で解説
では「道路工事」を
例題にして解説します
図面チェック等が終了した条件で
座標計算(新点設置_トラバース計算)
を開始します。
いまから記述する内容は
あくまでも一例です^^
6-1.座標をソフトに入力する
道路CLを測量ソフトに入力します
道路CLは直線,R等いろいろあると思いますが
とりあえずすべて入力してください
6-2.直線部分の幅杭の計算をする
道路CL(各測点)において
直角方向の角度を振って下さい
次に横断図より道路CLから
距離がいくつ行ったところに
構造物を築造するか確認
してください
この要領で
各測点各横断図ごとの
構造物の新点設置が出来きますね!
6-3.R部分の幅杭の計算をする
R部分ですが
法線の基準がRの中心点となりますので
道路CL及びR中心点からみて直角方向
を振って下さい
あとの作業は直線部分と同じです
上記の作業で
少なくとも各測点ごとの
構造物の新点は計算できます!
6-4.展開図と平面図との整合性を確認する
次に測点ごとに
計算した新しい座標値を
つなぎあわせていくのですが
各構造物の展開図がある場合には
展開図と新点との整合性を確認してください
また平面図との整合性も同じく確認してください
7.Rの要素について
7-1.Rの基礎知識
最後に
「R」についての基本知識です
下記のような図はよく見られていると思います
記述されて語句の意味としては
R:半径。BC:曲線始点。EC:曲線終点。IA:交角。CL:曲線長。円の中心
以上の意味と読み方となっています
いろんな語句が記載されていますが
少し頑張って最低限度として
先の6つの語句は記憶しておいてください
上記を踏まえて単曲線の性質を
いくつか覚えてもらいます
- 接線と半径と交わる角度は直角(90度)。
- 単曲線の内角は「交角IA」と等しい。
以上2点は
基本の性質なので絶対に記憶して下さい
7-2.道路工事の例
例として
「道路CLの延長L=20.000
R:100、道路の幅員w=5.000」とすると
Rの要素の図を
参考として
延長L=20.000は「CL」、R=100となります。
幅員がw=5.000なので
CLが丁度真ん中と仮定すると
両端が2.5mづつCLより広がりますので
道路両端のRは「R:97.5」と「R:102.5」
となります
発注者及び設計者から貸与される
Rの諸元については
縦断図に記載されている場合は
その記述にしたがって下さい
参考資料を示すと
上記の資料は
「緩和曲線(クロソイド)~単曲線~緩和曲線」
の3つの曲線情報が記載されています
今回は単曲線のみを説明します
さしあたり
座標計算に必要な情報を書きだすと
・R : 600.000m
・BC : 測点No272+10.177,(-129884.200,88439.713)
・EC : 測点No280+12.563,(-129911.873,88599.221)
・IA(交角) : 15度30’24”(根拠は下記及び107度35’43.382” -92度05’19.248”の答え)
・CL : 162.386m
・円の中心 : (-129312.271 , 88621.089)
以上になります
Rの要素の図を
参考に記入していくと下記のようになります
また与えられた座標値を
図示すると下記のようになります
見てもらうとわかると思いますが
R中心から見て
下方向(南方向)に向いているRなので
少しわかりずらいと思いますが
そこは座標計算を重ねていくと
慣れも発生しますので大丈夫です^_^
おわりに
以上
「土木工事における座標の求め方」の解説を
してきました
今回の内容は
座標の基本知識を解説しましたので
この知識をベースにして現場で実際の座標を
使用して計算してみてください!
新しい発見や自分なりのやり方が
見つかると思います
是非トライしてみて下さい
また次のブログでお会いしましょう(^^♪
ではでは